今回は Canon BJC-35v の修理である。
プリンターの故障の場合は、ヘッドのインク詰まりによる印字不良や用紙送りの不具合が多い。
このプリンターも印字不良として修理を依頼されたが、よくあるインク詰まりによる印字不良ではないようで、依頼人からも「重症かも知れない」と言い渡されている。
まず動作検証してみると、確かに重症で文字化けとは違いドットの配列が間違っているような感じで印刷されている。なかなか言葉で表現できないが、簡単に言うなら誤動作しながら印刷しているような感じだ。
早速と分解開始!
以前に廃インクエラーで動かなくなった Canon BJ M70 を分解しているので、分解は手馴れたものだ。
そもそも古い機種なのでメカ系のメンテナンスをしながら各部の様子を見てみると、全体的に高湿度の環境で使われたような汚れが見られる。廃インクパッドはメーカーにて交換されているようで、湿気の影響は少ないようだ。
高湿度の環境で使用しているとフレキケーブルやコネクタに水分が付着し錆び付いて接触不良になることが多いが、メーカーにて廃インクパッドの交換時にメンテナンスされたのかフレキケーブルやコネクタは綺麗な状態になっている。
とりあえず制御基板を取り外して見てみると...カスタム LSI のリードが腐食している!
このカスタム LSI は QFP 0.65mm ピッチ(未実測、予想値)なのでゴミに湿気が溜まり腐食したのだろうと思うが、以前に廃インクパッドの交換をメーカーでしているのでメンテナンス時に汗が付いて腐食した可能性もある。正確な要因は分からないが、どちらにしろ高湿度環境があって故障したのは確かだ。
さて、この腐食の修理だが、本来なら LSI を取り外して基板の洗浄と補修後に LSI を取り付けるのがベストと思う。しかし、代替の利かないカスタム LSI なので取り外しはしたくない。
そこで、この 0.65mm ピッチ間をお手製の工具で掃除することにした。
この工具の製作は簡単で、2mm 程度のピアノ線を適当な長さに切ってその端をハンマーで叩き薄く伸ばしやすりで成形して出来上がりである。焼き入れで硬く仕上げる必要はなく、逆に柔らかい方が使いやすく部品を傷めにくい。更に砥石で仕上げれば超小型ナイフもできてしまう。
では、話を戻そう。
この先の薄い工具を使ってクリーナーを吹きつけながら掃除して、必要に応じて半田で仕上げれば完了である。あとは、また錆び付かないように基板全体を洗浄しておこう。
グリスアップしながら分解した手順を逆にして組立し、カバーを外したまま動作確認で正常に印刷できた。
ここまで整備しておけばヘッドが壊れるまで動くと思うが、くれぐれも湿度には気をつけるように依頼人に言わなければ...